設計製図答案例>平成23年課題

趣味(自転車)のある専用住宅(木造2階建) 2011.6.8(水)

平成23年二級建築士試験「設計製図の試験」の課題

「趣味(自転車)室のある専用住宅(木造2階建)」全ブロック(全都道府県)共通
(注)答案用紙には、1目盛が4.55ミリメートル(矩計図を要求する場合は、矩計図の部分については10ミリメートル)の方眼が与えられている。

平成23年二級建築士試験「設計製図の試験」の課題が発表されました。「趣味(自転車)室のある専用住宅(木造2階建)」は、専用住宅に分類できます。この設計課題から「趣味(自転車)室がある」「専用住宅」という2つのキーワードが読み取れます。構造は、昨年と同様に「木造2階建」の指定で、「矩計図」「伏図」が要求されると予想されます。最近の出題傾向である要求室の増加や高齢者との同居などの条件は、計画力(エスキース)と作図力、的確な作図スピードと時間配分などが大きく問われる課題と言えます。

趣味(自転車)室がある

自転車に乗る人は増えてきました。通勤に利用する人、ダイエットに利用する人、ストレス解消に利用する人、サイクリングに利用する人、マウンテンバイクに利用する人、さまざまな多様な趣味の自転車に乗る人が増えています。その反面事故も多いようです。そのような時代背景の中、趣味(自転車)室が出題されたものと思われます。趣味(自転車)室は、人が屋内から出入りすることに加え、屋外から自転車の動線も配慮しなければなりません。土間スペースを活用し、自転車を洗える場所・パーツを保管することも考えておかなければなりません。また、敷地に高低差のある場合には、人と自転車は同じ条件の「スロープ」を指定されると、アプローチに大きく影響してくると思います。

専用住宅

専用住宅として気をつけなければならない問題として、「親子のふれあいや家族の団らんを大切にした居間、食事室、台所の計画」や、「家族・友人等の交流ができる空間の計画」、「高齢者との同居」等が考えられ、これらの設計条件が要求されるかどうかによって、室の面積構成や配置にも配慮が必要です。住宅全部にユニバーサルデザインが求められる可能性もあります。

設計条件の想定

<設計条件>
課題の最初に記載される最も重要な設計条件として、

・趣味(自転車)室用と住宅用の玄関を設ける
・家族全員、友人等で食事、団らん
・自転車を家族共通の趣味とする〜
・居間は趣味(自転車)室に隣接し、直接行き来できる
・趣味(自転車)室の独立性に配慮する
・高齢者の利用に配慮
・屋外からの車いすの利用、玄関ポーチ、屋外テラスへの屋外スロープの設置
・日当たりに配慮
・2階壁面を1階壁面より後退させる
・道路側に生垣、植栽を設ける
・既存樹木に関連させた配置計画とする
・建築物の耐震性を確保

などが考えられます。

<敷地>
敷地は、18m×18mのようなm単位の寸法で出題されることが多いようです。敷地面積としては、300〜330m2程度が想定できます。一面道路、二面道路(角地を含む)がありそれぞれ東西南北の接道が想定でき、多様なパターンが考えられます。また、敷地の一部を緑地スペースとし、建築物を制限することも考えられます。

<延べ面積>
要求される延べ面積は、180m2〜230m2の出題が最も多く、近年の出題では英会話教室併用住宅が最高で、230〜270m2、最低は、ピアノ教室併用住宅の150m2〜190m2です。A2の答案用紙に作図するため、これ以上に大きな敷地面積や延べ面積では用紙に納まらないことも面積範囲を制限していると思われます。

<構造、階数及び建築物の高さ>
木造2階建が指定されています。二級建築士試験では、その要求条件から在来工法で解答します。

<要求室>
玄関、居間、食事室、台所、趣味室、夫婦室、子供室、予備室、納戸、浴室、洗面脱衣室、洗面所、便所などがあり、特に居間、食事室、台所は1室としてもよいと条件されることも考えられます。それぞれの室機能を理解し、適切な動線計画ができるようになることが大切です。

<エレベーター及びスロープ>
昨年の「兄弟の二世帯と母が暮らす専用住宅」でもエレベーターの出題がありました。
屋外からの車いすの利用、玄関ポーチ、屋外テラスへの屋外スロープの設置など、細かい条件が要求されると思われます。

<屋外施設等>
駐車スペース、駐輪スペースが要求されることが考えられます。車椅子の利用に配慮する場合は、乗降のための広い面積の駐車スペースが必要です。家族が地域との関わりを大切にしている場合など、例えば「サイクリングの友人等を招き〜」との設計条件から5台分の駐輪スペースが要求されることも考えられます。その他、過去には、屋外に家庭菜園や花壇を設けるなどの要求があった課題もあります。

要求図面

課題発表時に公表されていた「要求図面」が平成19年度から公表されなくなりました。しかし、前回木造2階建が出題された平成22年度の課題を参考とすると、1階平面図兼配置図、2階平面図、2階床伏図兼1階小屋伏図、立面図、矩計図、面積表が要求されています。

今年度は、本試験の問題を見るまで描く図種が分かりませんが、おおよそ同様の要求図面が考えられます。矩計図を描くために、木構造の十分な知識が必要でしたが、伏図を描くにあたってより一層深い理解・知識が求められます。また断面図についても、万が一の要求に備え、練習しておきましょう。

4時間30分という限られた時間の中で、テーマをもった2階建ての建物を計画し、平面図2面を描き上げるだけでも大変な作業です。本年度の課題は、エスキースと木構造の理解に重点を置きながら、作図のスピードを確実に身につけ、完成度を高める必要があるといえます。

過去の類似課題

過去の出題を振り返ってみると、「〜のある専用住宅」という課題は数回出題されています。その中でも今年度課題の主要テーマとなる「趣味室のある〜」は、平成16年に全ブロックで出題された「趣味(フラワーアレンジメント)室のある専用住宅(木造2階建)」、平成12年度に北海道・東北・関東・北陸・東海・近畿・中国四国で出題された「趣味(音楽)室のある親子二世帯住宅(木造2階建)」が類似した課題といえます。
過去の出題は、建物全体の面積構成、所要室の要求など参考にできることも多く、概要を示しておきます。

平成16年の課題概要
平成16年の課題概要 趣味(フラワーアレンジメント)室のある専用住宅
敷地
18.50m×16.50m 30525m2、北側接道(道路幅員6.0m)
延べ面積
150m2以上190m2以下
家族構成
夫婦(50歳代)、子供1人(男子大学生)
所要室
1階
玄関、居間、食事室・台所、趣味室、和室、浴室、洗面脱衣室、便所、納戸
2階
夫婦室、子供室、洗面所、便所
駐車・駐輪スペース
小型乗用車(5人乗り)1台、自転車3台

平成12年の課題概要
平成12年の課題概要 趣味(音楽)室のある親子二世帯住宅
敷地
16.50m×20.00m 330.00m2、西側接道(道路幅員6.0m)
延べ面積
180m2以上210m2以下
家族構成
親世帯:夫婦(60歳代)
子世帯:夫婦(40歳代)、子供1人(女子中学生)
所要室
1階
玄関ホール、居間、食事室・台所、趣味室、
夫婦室(親世帯)、浴室、洗面脱衣室、便所、納戸
2階
夫婦室(子世帯)、子供室、和室、洗面所、便所
駐車スペース
小型乗用車(5人乗り)1台











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