設計製図答案例>平成22年課題

兄弟の二世帯と母が暮らす専用住宅〔木造2階建〕 2010.6.9(水)

平成22年二級建築士試験「設計製図の試験」の課題

「兄弟の二世帯と母が暮らす専用住宅〔木造2階建〕」全ブロック(全都道府県)共通
(注)答案用紙には、1目盛が4.55ミリメートル(矩計図を要求する場合は、矩計図の部分については10ミリメートル)の方眼が与えられている。

この設計課題から「兄弟の二世帯」「母が暮らす」「専用住宅」という3つのキーワードが読み取れます。構造は、昨年の「RC造」から「木造2階建」の指定へと変わり、一昨年と同様に「矩計図」「伏図」が要求されると予想されます。最近の出題傾向である要求室の増加や高齢者との同居などの条件は、計画力(エスキス)と作図力、的確な作図スピードと時間配分などが大きく問われる課題と言えます。

兄弟の二世帯

「兄弟の二世帯と母の同居」といった、一見、大家族の暮らしは、日本では考えにくいですが、兄弟それぞれの家族構成が様々に想定できることから、寝室などの要求室の増加が見込まれます。また各世帯で、専用なのか一部共用とするのかによって、玄関や水回りなどの条件が大きく異なりますので、十分な計画力を身につける必要があります。

屋外スペースにおいても、駐車スペースや駐輪スペース、アプローチなど、最低でも二世帯分の機能が要求されると考えられます。

母が暮らす

「母」は高齢者と想定されますが、自立なのか、援助あるいは介護が必要かによって、また兄弟どちらかの扶養、同居の状態によって、水まわりなどの機能が独立するか共用とするのかが考えられます。また一昨年の課題では、木造住宅においても「車いすによる移動に配慮」を要求されましたので、今年度も出題の可能性は高いと予想されます。しかも多世帯であることから、1階のみ車いすに対応していれば良いとも限らず、住宅全部にユニバーサルデザインが求められる可能性もあります。

屋内のみならず、屋外においても同様で、特に一昨年の課題から具体的な要求のある「スロープ」が条件とされると、前面道路や車いす対応駐車スペースからのアプローチに大きく影響します。

専用住宅

ただ単に「専用住宅」であれば良いのではなく、「多世帯住宅」としての機能を求められるため、前述のように何を「独立」させて何を「共用」とするのかによって、計画に大きく影響します。課題タイトルの文面だけでは、兄弟二人と母それぞれが別々の生計を営む三世帯とも考えられますが、二級建築士の試験としては二世帯住宅程度の機能が要求される課題だと考えられます。

多世帯住宅では、アプローチや玄関、屋内機能も明確に分離させる場合や、玄関は別でも屋内ではある程度共用といった条件も考えられます。1階と2階それぞれに玄関があり、屋内の階段で行き来できることも考えられます。高齢者の住まいとしては、社会とのつながりをどう保つのかもポイントとなります。敷地をよく読み、敷地の有効利用はもちろん、プライバシーや複雑になりがちな生活動線に配慮すべき課題と言えます。

試験対策として

最近の課題は、実務レベルの知識が問われる出題傾向にあり、二級建築士が設計できる木造住宅の法規についても、もう一度復習しておく必要があります。さらに社会動向にも注目し、最近の住宅制度、省エネや住宅性能評価(品確法)についても日頃から理解を深めておきましょう。

設計条件の想定

<設計条件>
課題の最初に記載される最も重要な設計条件として、

・生活空間を明確に区分
・それぞれの世帯(階)で専用の玄関を設ける
・玄関、居間、食事室、台所等を共用する
・家族全員、友人等で食事、団らん
・○○を家族共通の趣味とする〜
・居間や趣味室に隣接し、直接行き来できる
・高齢者の利用に配慮、スペースの大きさ、床高の指定、屋内での車いす利用、手すり利用による歩行
・屋外からの車いすの利用、玄関ポーチ、屋外テラスへの屋外スロープの設置
・日当たりに配慮
・2階壁面を1階壁面より後退させる
・道路側に生垣、植栽を設ける
・既存樹木に関連させた配置計画とする
・建築物の耐震性を確保

などが考えられます。

<敷地>
敷地は、18m×18mのように、10間×10間のように尺貫法モジュールの寸法で出題されることが多いようです。敷地面積としては、300〜330m2程度が想定できます。一面道路、二面道路(角地を含む)がありそれぞれ東西南北の接道が想定でき、多様なパターンが考えられます。また、敷地の一部を緑地スペースとし、建築物を制限することも考えられます。

<延べ面積>
要求される延べ面積は、180m2〜230m2の出題が最も多く、近年の出題では英会話教室併用住宅が最高で、230〜270m2、最低は、ピアノ教室併用住宅の150m2〜190m2です。一昨年の「高齢者の集う趣味(絵手紙)室のある二世帯住宅(木造2階建)」では、180m2〜230m2が条件とされ、今年度も比較的大きな延べ面積となることが想定されます。A2の答案用紙に作図するため、これ以上に大きな敷地面積や延べ面積では用紙に納まらないことも面積範囲を制限していると思われます。

<構造、階数及び建築物の高さ>
木造2階建が指定されています。二級建築士試験では、その要求条件から在来工法で解答します。

<要求室>
多世帯住宅の課題では、家族5人(夫婦、子供2人、母)というような条件で出題されていますが、今年度は兄弟がどのような家族構成かによって、家族数が多くなることも考えられます。これによって、要求室数が増減します。それぞれの室機能を理解し、適切な動線計画を行うことが大切です。

<屋外スペース>
屋外からの車いすの利用、玄関ポーチ、屋外テラスへの屋外スロープの設置など、細かい条件が要求されると思われます。過去には、屋外に家庭菜園や花壇を設けるなどの要求があった課題もあります。

<駐車・駐輪スペース>
世帯ごとに、駐車スペース、駐輪スペースが要求されることが考えられます。車椅子の利用に配慮する場合は、乗降のための広い面積の駐車スペースが必要です。家族が地域との関わりを大切にしている場合など、例えば「家族・友人等で料理・食事ができる〜」との設計条件から5台分の駐輪スペースが要求された課題もあります。

要求図面

課題発表時に公表されていた「要求図面」が平成19年度から公表されなくなりました。しかし、前回木造2階建が出題された平成20年度の課題を参考とすると、1階平面図兼配置図、2階平面図、2階床伏図兼1階小屋伏図、立面図、矩計図、面積表が要求されています。

今年度は、本試験の問題を見るまで描く図種が分かりませんが、おおよそ同様の要求図面が考えられます。矩計図を描くために、木構造の十分な知識が必要でしたが、伏図を描くにあたってより一層深い理解・知識が求められます。また断面図についても、万が一の要求に備え、練習しておきましょう。

4時間30分という限られた時間の中で、複数のテーマをもった2階建ての建物を計画し、平面図2面を描き上げるだけでも大変な作業です。本年度の課題は、エスキースと木構造の理解に重点を置きながら、作図のスピードを確実に身につけ、完成度を高める必要があるといえます。

過去の類似課題

過去の出題を振り返ってみると、平成20年に出題された「高齢者の集う趣味(絵手紙)室のある二世帯住宅(木造2階建)」、平成17年の「近隣の街並みに配慮した車庫付二世帯住宅(木造2階建)」が今年の課題に類似しています。過去の出題は、建物全体の面積構成、所要室の要求など参考にできることも多く、概要を示しておきます。

平成20年の課題概要
高齢者の集う趣味(絵手紙)室のある二世帯住宅(木造2階建)
敷地 18.00m×18.00m  324.00m2
接道:南側(幅員6.0m)
延べ面積 180m2以上230m2以下
家族構成 夫婦、子供2人、祖母
要求室 1階 趣味室、来客用便所、倉庫、玄関ホール、祖母室(趣味室と隣接)、共用の居間・食事室・台所、浴室、洗面脱衣室、便所(車いす使用、手すりでの移動、廊下の幅、引き戸または引き違い)
2階 夫婦寝室、子供室2、浴室、洗面脱衣室、納戸、便所
屋外スペース 屋外スロープ、屋外テラス、駐車スペース2台分(うち1台車いす使用者用)、駐輪スペース3台
その他  耐震性の確保

平成17年の課題概要
近隣の街並みに配慮した車庫付二世帯住宅(木造2階建)
敷地 18.00m×17.00m 306.00m2
接道:西側(幅員6.0m)
延べ面積 180m2以上220m2以下
家族構成 親世帯:夫婦2人、子世帯:夫婦、子供2人
所要室

1階

親世帯部分:夫婦室、和室、共用部分:玄関、玄関、居間・食事室・台所、浴室、洗面脱衣室、便所、納戸、自動車車庫
2階 子世帯部分:夫婦室、子供室2、洗面所、便所
屋外スペース 駐輪スペース3台
前面道路に最も近い2階壁面後退、敷地道路側に生垣・植栽











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