設計製図答案例>平成18年課題

地域に開かれた絵本作家の記念館〔鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)2階建〕 2006.6.27(火)

平成18年二級建築士試験「設計製図の試験」の課題が発表されました。全ブロック(全都道府県)共通の「地域に開かれた絵本作家の記念館〔鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)2階建」です。

この設計課題から「地域に開かれた」「絵本作家」「記念館」という3つのテーマ(キーワード)を読み取ることができます。「地域に開かれた」ということから、子供から老人まで利用できる地域住民のコミュニティ施設としての用途が考えられます。「絵本作家」からは、作家のアトリエ、ギャラリー等。また、絵本に限定されていることで母親が幼い子に絵本を読み聞かせている光景が思い浮かび、少子化や子育て問題など時代背景に即した課題だとも感じます。「記念館」からは、情報展示コーナーや売店などの諸室が考えられます。なお、記念館といわれる施設には様々なものがありますので、下記の検索ボックスで検索され、その概要を把握してください。

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今年度課題の大きな特徴は、「主要構造部材表」が要求されたことです。鉄筋コンクリート造の設計では、構造計算に基づき導きだした配筋などを示す部材リストを作成します。この部材リストは、一般に、部材形状・主筋本数・フープ(梁にあってはスターラップ)の間隔や鉄筋の大きさを一覧にしたものです。

また、主要構造部は、建築基準法第2条第五により、”壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、附け柱、揚げ床、最下階の床、廻り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。”とされ、今年出題される「主要構造部材表」は、壁、柱、床、梁、屋根、階段の部材リストだと考えられます。

4時間30分の制限時間の中で実際に構造計算をすることは難しいため、”鉄筋量が小さすぎる、又は、多すぎる”という判断ができる知識を求めるものだと思われます。また、壁、柱、床、梁、屋根、階段全ての部材を示すのではなく、柱、梁を主とした部材表だと想定しますが、これらの適切な形状・配筋について作図できるよう練習しておく事が大切です。


過去の出題を振り返ってみると、平成14年に出題された「商店街に建つコミュニティ施設」、昭和62年の「児童図書室を持つ地域集会所」が今年の課題に類似しています。「商店街に建つコミュニティ施設」は鉄骨造での出題でしたが、ラーメン構造であることから、鉄筋コンクリート造ラーメン構造に置換えて計画することが可能です。

上記にあげた過去の出題は、建物全体の面積構成、所要室の要求など参考にできることも多く、課題の概要を示しておきます。

昭和62年の課題概要 児童図書室を持つ地域集会所
敷地 20.00m×16.00m(角地) 320.00m2
接道:南側(幅員8.0m) 東側(幅員12.0m
延べ面積 240m2以上290m2以下
所要室
1階
玄関ホール、児童図書室、事務室、小集会室、湯沸コーナー、便所、倉庫
2階
大集会室、小集会室、湯沸コーナー、便所、倉庫
駐車、駐輪スペース 乗用普通自動車1台、自転車10台

平成14年の課題概要 商店街に建つコミュニティ施設
敷地 20.00m×18.00m 360.00m2
接道:北側(幅員6.0m) 南側(幅員8.0m)
延べ面積 250m2以上290m2以下
職員構成 管理責任者1名、事務員2名
所要室
1階
玄関、事務室、多目的室、湯沸室、便所、車いす使用者用便所、倉庫、
2階
和室、洋室、湯沸室、便所
駐車、駐輪スペース 小型乗用車(サービス用)1台、自転車10台
エレベーター・スロープ・通り抜け通路・屋外イベントスペース


設計主旨について
課題の最初に記載される最も重要な設計条件として、高齢者・車いす使用者の利用に配慮、屋外イベントスペースとの連絡、通り抜け通路、一部の室の天井高を指定、アプローチ制限などが考えられます。

<敷地>

過去の鉄筋コンクリート造の出題では敷地面積350m2程度が多く、一面道路、二面道路(角地を含む)があり、それぞれに東西南北の接道が想定でき、多様なパターンが考えられます。

<延べ面積>
過去の鉄筋コンクリート造の出題では、要求される延べ面積は、250m2〜290m2の出題が最も多く、近年の出題では最高で290m2、最低は、喫茶室のある画廊併用住宅の230m2〜270m2です。二級建築士が設計できる鉄筋コンクリート造の延べ面積は300m2以下であり、設計製図の試験においても300m2以下の範囲で出題されています。

<所要室>
今年の課題では、玄関ホール、ギャラリー、アトリエ、売店、閲覧室、図書コーナー、事務室、集会室、多目的室、便所(男女別・車いす用・幼児用)、湯沸室、倉庫、エレベーターなど多くの室を想定できますが、これらを全て計画することは、その規模において困難だと思われます。それぞれの室機能を理解し、適切な動線計画ができるようになることが大切です。

<駐車・駐輪スペース>
地域に開かれたという設計課題から、駐車スペース、駐輪スペースの要求は十分考えられます。

<要求図面>
要求図面については、課題発表時(6/21)に”1階平面図兼配置図、2階平面図、立面図、断面図、面積表、仕上表及び主要構造部材表とする。(注)答案用紙には、1目盛が5ミリメートルの方眼が与えられている。”と公表されています。











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