設計製図答案例>平成16年課題

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平成16年の課題「趣味(フラワーアレンジメント)室のある専用住宅(木造2階建)」について 2004.6.28(月) 


 平成16年二級建築士試験「設計製図の試験」の課題が発表されました。

全ブロック
(全都道府県)「趣味(フラワーアレンジメント)室のある専用住宅(木造2階建)」は、専用住宅に分類できます。

 過去の出題を振り返ってみると、「〜のある(〜をもつ)専用住宅」という課題は数回出題されています。その中でも今年度課題の主要テーマとなる「趣味室のある〜」は、平成2年に東海・九州ブロックで出題された「趣味(絵画)のためのアトリエをもつ専用住宅(木造2階建)」、平成12年度に北海道・東北・関東・北陸・東海・近畿・中国四国で出題された「趣味(音楽)室のある親子二世帯住宅(木造2階建)」が類似した課題といえます。また、趣味がフラワーアレンジメントであることから、生花を扱うという意味で、平成5年に出題された「歩行者専用道路に面する生花店併用住宅(木造2階建)」が関連した課題といえます。

 また、今年度課題の大きな特徴は、「2階床伏図兼1階小屋伏図」が要求されていることです。特に「1階小屋伏図」が要求されていることから総2階建ではなく、1階の面積が2階より大きくなると考えられます。このことから室配置及び室形状に注目すると、一昨年課題の北海道・東北・関東・近畿・中国四国ブロックで出題された「工房のある工芸品店併用住宅(木造2階建)」で「店舗部分の売場は、天井の高い空間とし、上部には2階部分を設けてはならない。」ことが設計条件としてあげられた点や、昨年度出題の北海道・東北・関東・北陸・東海・中国四国・九州ブロック「吹抜けのある居間をもつ専用住宅(木造2階建)」等が類似課題といえます。

 今年度課題の主要テーマである「趣味室」で行う趣味は「フラワーアレンジメント」が設定されており、フラワーアレンジメントについての理解も必要です。フラワーアレンジメントとは、花を整理、整頓するという意味で、花がより素敵に見えるように器や花材(バスケットやリボン、ドライフラワー等)を用いて生けることです。日本の生け花(華道)とは、根底となる精神や道具、生花の用い方等の違いから区別されますが、華道と同様に長い歴史の中で影響を受けた様々なスタイル(生け方)があります。
 しかし、共通の認識で考えられる事柄も多く、設計課題の中では生花への影響を考えた室配置、風光、水まわり、作業空間の快適性等に配慮が必要と考えられます。

 その他、専用住宅として気をつけなければならない問題として、「親子のふれあいや家族の団らんを大切にした居間、食事室、台所の計画」や、「家族・友人等で花を楽しみながら料理・食事ができる空間の計画」、「高齢者との同居」等が考えられ、これらの設計条件が要求されるかどうかによって、室の面積構成や配置にも配慮が必要です。

 上記にあげた過去出題の専用住宅は、建物全体の面積構成、所要室の要求など参考にできることも多く、課題の概要を示しておきます。


平成2年の課題概要
 (
趣味(絵画)のためのアトリエをもつ専用住宅
敷地
18.20m×16.38m 298.11m2、南側接道(道路幅員6.0m)
延べ面積
160m2以上190m2以下
家族構成
夫婦、子供2人(男子高校生、女子中学生)
所要室
1階
玄関、居間、客間、アトリエ、食事室、食事室、台所、浴室、洗面脱衣室、便所
2階
夫婦室、子供室(2室)、洗面所、便所、納戸
駐車スペース
乗用普通自動車1台

平成12年の課題概要
 (
趣味(音楽)室のある親子二世帯住宅
敷地
16.50m×20.00m 330.00m2、西側接道(道路幅員6.0m)
延べ面積
180m2以上210m2以下
家族構成
親世帯:夫婦(60歳代)
子世帯:夫婦(40歳代)、子供1人(女子中学生)
所要室
1階
玄関ホール、居間、食事室・台所、趣味室、夫婦室(親世帯)、浴室、洗面脱衣室、便所、納戸
2階
夫婦室(子世帯)、子供室、和室、洗面所、便所
駐車スペース
小型乗用車(5人乗り)1台

平成5年の課題概要
 (歩行者専用道路に面する生花店併用住宅
敷地
18.20m×16.38m 298.11m2、西側接道(道路幅員8.0m)、東側歩行者専用道路(道路幅員6.0m)
延べ面積
180m2以上220m2以下
家族構成
夫婦、子供1人(男子中学生)、通勤従業員女子2人
所要室
1階
店舗
売場(東側アプローチ)、フラワーキーパー、作業室兼倉庫、従業員休憩室、洗面所、便所
1階
住宅
玄関(西側アプローチ
2階
居間、食事室、台所、夫婦室、子供室(1室)、予備室、浴室、洗面脱衣室、便所、納戸
駐車スペース
歩行者専用道路に面して客用自転車5台、西側に業務用小型トラック1台、家族用小型自動車乗用車(5人乗り)1台
・歩行者専用道路に面した敷地の敷地境界から2500mmの範囲は屋外販売・駐輪等のスペースとし、建物を計画してはならない

平成14年の課題概要
 (工房のある工芸品店併用住宅
敷地
15.00m×20.00m 300.00m2、北側接道(道路幅員6.0m)
延べ面積
190m2以上230m2以下
家族構成
夫婦(50歳代)


1階
店舗
売場、工房、準備室、便所、洗面所
1階
住宅
玄関、和室、納戸
2階
居間、食事室・台所、書斎(夫用)、書斎(妻用)、浴室、洗面脱衣室、便所
駐車スペース
小型乗用車(5人乗り)3台、駐輪スペース5台
・店舗部分の売場は、天井の高い空間とし、上部には2階部分を設けてはならない。

平成16年の課題概要
 (吹抜けのある居間をもつ専用住宅
敷地
18.50m×17.00m 314.50m2、南側接道(道路幅員6.0m)
延べ面積
180m2以上220m2以下
家族構成
夫婦(50歳代)、夫婦(40歳代)、子供2人(男子高校生、女子中学生)
所要室
1階
玄関、食事室・台所、居間、和室、親夫婦室、親夫婦用便所、夫婦室、浴室、洗面脱衣室、便所、納戸
2階
子供室(2室)洗面脱衣室、便所
駐車スペース
乗用車1台、駐輪スペース3台
・9m2以上の屋外テラスを設け、居間から直接行き来できるようにする。

設計条件について
課題の最初に記載される最も重要な設計条件として、親子のふれあいや家族の団らんを大切にした居間、食事室、台所を計画する。家族・友人等で花を楽しみながら料理・食事ができる空間を計画する。和室を設ける。居室の日照に留意するなどが考えられます。
特に、趣味のフラワーアレンジメントで使用する生花は、直射日光や強い自然風、電気熱等を嫌うため、趣味室は北側または東側の室配置が要求されると予想されますが、趣味室内に給排水設備を設けるのか、それとも洗面室を利用するのか、生花を保管するかどうか、また生花・花材(道具)の保管室がある場合やギャラリーを設ける場合など、独立した作業室の確保が要求された場合は南側の室配置も考慮することが可能です。

<敷地>
敷地は、18.2m×18.2m程度が多く、10間×10間のように尺貫法モジュールの寸法で出題されることが多いようです。敷地面積としては、300〜330m2程度ということになります。一面道路、二面道路(角地を含む)がありそれぞれ東西南北の接道が想定でき、多様なパターンが考えられます。

<延べ面積>
要求される延べ面積は、180m2〜220m2の出題が最も多く、近年の出題では最高で250m2、最低は、ピアノ教室併用住宅の150m2〜190m2です。A2の答案用紙に作図するため、これ以上に大きな敷地面積や延べ面積では用紙に納まらないことも面積範囲を制限していると思われます。

<家族構成>
専用住宅の課題では、家族4人(夫婦、子供2人)というような条件で出題されていますが、平成11年の課題のように、家族5人(夫婦、子供3人)の場合や複数世帯、高齢者が同居する場合、夫婦のみ等が考えられます。このことにより所要室要求が異なることになります。

<所要室>
家族構成により子供室や夫婦室など居室の要求数に違いが出ますが、一般的な住居の室構成の想定でよいと思われます。
趣味室に関する室としては、生花保管室、花材(道具)保管室(倉庫等)、作業室、ギャラリー(コーナー)等が考えられます。それぞれが独立せず、兼用することも考えられます。専用住宅ですので、フラワーアレンジメント教室が附設されることはないと考えますが、もし趣味室が少人数制の教室を兼ねる場合や友人を招いて花を楽しむ場合等は、最近流行のサロン風の居室が要求されることも考えらます。

<駐車・駐輪スペース>
家族用の駐車スペースが考えられえますが、敷地18.2mの接道長さを想定すると1〜2台が限度となります。
駐輪スペースは、専用住宅の課題で要求されることは少ないですが、平成11年度の「家庭菜園のある専用住宅」では、「家庭菜園で収穫されたものを用いて、家族・友人等で料理・食事ができる屋外空間を計画する。」との設計条件から5台分の屋外駐輪スペースの要求が、また昨年度の「吹抜けのある居間をもつ専用住宅」では、家族構成が三世帯であることから駐輪スペース3台が要求されています。上記〈所要室〉のように、家族数が多い場合やフラワーアレンジメントを通じて客や生徒が定期的に来る設定がなされた場合には、駐輪スペースが要求されると考えられます。

<要求図面>
近年の併用住宅(木造2階建)の出題は、1階平面図兼配置図(1/100)、2階平面図(1/100)、立面図(1/100)、矩計図(1/20)、面積表という構成が殆どでしたが、今年度は立面図の要求がなく、かわりに「2階床伏図兼1階屋根伏図」が要求されています。今までも矩計図を描くために、木構造の十分な知識が必要でしたが、伏図を描くにあたってより一層深い理解・知識が求められます。この他、稀に断面図、仕上げ表が出題されており、十分に練習しておく必要があります。

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